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東京地方裁判所 昭和46年(ワ)11218号 判決 1972年7月24日

原告(反訴被告) 坂江善喜

右訴訟代理人弁護士 宮沢邦夫

被告(反訴原告) 植竹本平

右訴訟代理人弁護士 川上三郎

右訴訟復代理人弁護士 稲野良夫

主文

1  被告(反訴原告)は、原告(反訴被告)に対し、別紙物件目録記載の土地について、横浜地方法務局海老名出張所昭和四二年六月二四日受付第九、〇〇一号をもってなされた所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

2  被告(反訴原告)の原告(反訴被告)に対する反訴請求を棄却する。

3  訴訟費用は本訴、反訴を通じて被告(反訴原告)の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  本訴

(一)  原告(反訴被告、以下単に「原告」という。)

主文第一項と同旨および「訴訟費用は被告(反訴原告、以下単に「被告」という。)の負担とする。」との判決

(二)  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

二  反訴

(一)  被告

「原告は、被告に対し、別紙物件目録記載の土地を引き渡せ、訴訟費用は原告の負担とする。」との判決および仮執行の宣言

(二)  原告

主文第二項と同旨および「訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

第二当事者の事実上の主張

一  本訴

(一)  原告の請求原因

1 原告は、昭和二六年九月一〇日、訴外東京急行電鉄株式会社より別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を買い受けてその所有権を取得し、同年一〇月二二日その旨の所有権取得登記を了した。

2 ところが、本件土地には被告のため横浜地方法務局海老名出張所昭和四二年六月二四日受付第九、〇〇一号をもって、同年四月二五日付の原告から被告に対する売買を原因とする、所有権移転登記(以下「本件登記」という。)が経由されている。

3 しかしながら、原告は被告との間で本件土地について売買契約を締結したことはなく、所有権移転登記手続をなしたこともない。

4 よって、原告は被告に対し、本件土地の所有権に基き、本件登記の抹消登記手続を求める。

(二)  請求原因に対する被告の答弁

1 請求原因1、2項の事実は認める。

2 同3項の事実は否認する。

(三)  被告の抗弁

1 被告は、昭和四二年四月二五日ころ、原告の代理人である訴外長野広美との間で本件土地を金六八〇万円で買い受ける旨の売買契約を締結し、その売買代金として同日金一六〇万円、同年五月末日ころ金八〇万円をそれぞれ長野に支払い、残額金四四〇万円は長野に支払う代わりに同人の要請に応じ同人が代表取締役をしている訴外株式会社工芸デザインスタジオが訴外東洋信託銀行株式会社に負っている債務の弁済として右訴外銀行に支払い、もって前記売買代金を完済してその所有権を取得し、本件土地につき本件登記を了したものである。

2 かりに長野に本件土地の売買契約について代理権がなかったとしても、原告は表見代理の規定により本人としての責任を免れない。

すなわち

(1) 長野は、右売買契約当時、原告から交付を受けた原告の所有にかかる本件土地の権利証、原告の実印および印鑑証明書、原告名義の委任状を所持し、長野はこれらを利用して本件土地につき原告の代理人として売買契約を締結し、本件登記をなしたものであり、原告が長野に右権利証等を交付したのは同人に対し本件土地の売買契約につき代理権を与えた旨を表示しているものというべきであるから、原告は民法第一〇九条により本人としての責任を免れない。

(2) かりに、原告が長野に対し本件土地の売買契約につき代理権を与えた旨を表示したことが認められないとしても、原告は長野に対し、昭和四〇年八月六日本件土地について、訴外永代信用組合との間で根抵当権設定契約および停止条件付賃貸借契約を締結するにつき、また同年一二月二七日本件土地について訴外東洋信託銀行株式会社との間で根抵当権設定契約および代物弁済予約契約を締結するにつき、それぞれ代理権を与えていたものであり、長野が原告の代理人として本件土地について被告との間で売買契約を締結したのはその有していた右代理権の範囲を越えてなしたものである。しかして原告は、昭和四〇年九月一七日長野が訴外株式会社工芸デザインスタジオを設立するに際し、自ら設立発起人となり、爾来右訴外会社に資金的援助をなし、本件土地も右訴外会社の資金捻出のために利用されていたものであり、しかも、長野が原告の代理人として本件土地につき被告と売買契約を締結した際には前記のとおりの本件土地の権利証等を所持していたものであって、被告は右売買契約についても長野に代理権があるものと信ずるについては正当の理由があった。したがって、原告は民法第一一〇条により本人としての責任を免れない。

(3) かりに、右本件土地の売買契約当時、長野の前記根抵当権設定契約等についての代理権が消滅していたとしても、右は過去において代理人であった者が代理権消滅後に前に有していた代理権の範囲を越える行為をした場合であり、被告は右代理権の消滅を知らなかったものであるから、原告は民法第一一二条と第一一〇条により本人としての責任を免れない。

(四)  抗弁に対する原告の答弁および主張

1 抗弁1項の事実は否認する。原告は長野に本件土地の売買契約について代理権を与えたことはない。

2 抗弁2項(1)の事実は否認する。かりに長野が被告主張のような本件土地の権利証を所持していたとしてもこれにより原告が長野に対し、被告主張のような代理権を与えたことを表示したことにはならない。すなわち、被告主張の本件土地の権利証は、原告が訴外永代信用組合に対して本件土地につき根抵当権を設定した際、そのままこれを右訴外組合に預けていたものを、長野において同訴外組合係員を欺いて同係員より勝手に交付を受け、原告の知らない間に本件土地の売買契約に利用したものであり、被告主張にかかる原告の実印および印鑑証明書も、原告が右訴外組合の長野に対する貸付金の連帯保証人になっていたことからその事務手続上右訴外組合の要求する都度公正証書作成に必要な印鑑証明書、印鑑を提示することになっていたのを奇貨とし、長野において原告に対し右訴外組合に提示する旨詐ってその旨誤信した原告より交付を受けたものを本件土地の売買契約に利用したものであり、右のような経過に照らすと、原告において、右のように実印や印鑑証明書を長野に交付したことをもって同人に対し本件土地の売買契約につき代理権を与えた旨を表示したとはいえない。

3 抗弁2項(2)の事実のうち、原告が被告主張の日に訴外永代信用組合との間で本件土地につき根抵当権設定契約および停止条件付賃貸借契約を締結したこと、原告が被告主張のころ長野において設立した訴外株式会社工芸デザインスタジオの設立発起人になったことは認めるが、その余の事実は否認する。

原告が右訴外組合との間で本件土地につき右のような契約を締結するにつき長野に代理権を与えたことはない。原告は自ら直接右訴外組合の担当係員との間で約定をなし、契約書にも自ら署名押印したものであり、右契約に伴う公正証書の作成、登記申請手続等も長野が原告の代理人としてなしたものではなく、右は右訴外組合の係員または同組合の指定する者が原告の委任状によって原告の代理人としてなしたものである。もっとも、原告は右公正証書作成等の事務手続上右訴外組合より原告の実印、および印鑑証明書の提示を求められ、その際長野にこれらを同訴外組合に持参させたことはあるが、右は長野において単に原告の使者として行動したに過ぎないものである。

また、本件土地につき訴外東洋信託銀行株式会社との間で根抵当権設定契約および代物弁済予約契約が締結されたことについては原告において全く関知しないところであり、右は長野が、前記原告と訴外永代信用組合との間の契約締結の際、右契約およびこれに伴う諸手続のために原告より交付を受けていたその実印および印鑑証明書をほしいままに利用して原告名義を冒用して契約を締結したものと考えられる。

4 抗弁2項の(3)の主張は争う。

5 被告は民法第一〇九条による表見代理を主張するが、被告は原告が交付したとする本件土地の権利証等を長野が所持していたことをもって原告が長野に本件土地の売買契約につき代理権を与えた旨表示したと信ずるにつき過失があったものであり、同条による保護を受けられるものではない。右過失を裏付ける主な具体的事実は次のとおりである。

(1) 被告と長野はもと夫婦であったものであり、離婚後も被告は長野を自己の経営する会社で従業員として使用していたものであり、虚言の多い長野の性格を熟知していたこと

(2) 前記のとおり、長野は原告の関知しない間に原告名義で本件土地につき訴外東洋信託銀行株式会社との間で根抵当権設定等の契約をなしたが、これについては被告は長野に対し右訴外銀行を紹介するなどの便宜をはかってやり右訴外銀行からの融資額は金五〇〇万円にものぼりこれがすべて長野の使途にあてられることを知っていたものであるうえ、その際右訴外銀行が本件土地の所有者である原告に担保供与の有無を確認しなかったことも知っていたこと

(3) 本件土地の売買契約は、その代金は金六八〇万円であるのに、うち金四四〇万円は現実の支払いはなく、長野の右訴外銀行に対する債務の弁済に振替処理されているなど特殊な売買であること

(4) 長野が被告経営の会社の従業員であった当時、原告は長野を右会社に訪ねたことがありその際長野の紹介により原告は被告に名刺を手交したことがあり被告は原告の勤務会社も知っていたのにもかかわらず、本件土地の売買契約にあたっては容易に原告の意向を確認できたのにあえてそれをなさなかったこと

6 被告は民法一一〇条による表見代理を主張するが、かりに被告主張のように過去に原告が長野に対し、本件土地につき被告主張のような契約締結につき代理権を与えていたとしても、本件土地の売買契約当時にはすでにその契約は完了し委任の目的を達したのでこれに関する代理権も消滅していたものであるから、同法の適用を受けるいわれはない。

7 かりに右代理権消滅の事実が認められないとしても前記5記載の(1)ないし(4)の事実からすると、被告は、長野において本件土地につき売買契約を締結することがその代理権の範囲内の事項と信ずるにつき過失があったものであるから、被告は民法第一一〇条による保護を受けることはできない。

(五)  原告の主張に対する答弁

原告の主張5ないし7項の事実は否認する。

二  反訴

(一)  被告の請求原因

次のとおり本訴抗弁の未尾に付加するほか右本訴抗弁と同様である。

1 原告は本件土地を占有している。

2 よって、被告は原告に対し、本件土地の所有権に基きその引渡を求める。

(二)  請求原因に対する原告の答弁

「右請求原因1の事実は認める。」と付加するは本訴抗弁に対する答弁と同様である。

(三)  被告の抗弁および抗弁に対する原告の答弁

抗弁および抗弁に対する答弁は、「本訴抗弁に対する原告の答弁および主張」欄記載の主張、および右主張に対する答弁と同様である。

第三証拠≪省略≫

理由

第一本訴についての判断

一  原告が昭和二六年九月一〇日本件土地をその主張のとおり買い受けてその所有権を取得し、同年一〇月二二日その旨の所有権取得登記を了したこと、本件土地に被告のため本件登記が経由されていることはいずれも当事者間に争いがない。

二  ところで、被告は、本件土地については昭和四二年四月二五日ころ原告の代理人である長野よりその主張のとおりの約定で買い受けた旨主張するので、まず、この点について検討するに、≪証拠省略≫によると、被告は昭和四二年四月二五日、原告より本件土地の売却方を依頼されていると称する長野との間で、本件土地につき、原告を売主、被告を買主として、売買代金を金六八〇万円と定めて売買契約を締結し、右売買代金として、長野に対し、右同日金一六〇万円、同年五月末日ころ金八〇万円をそれぞれ支払い、残額金四四〇万円は、同年九月二五日、長野の要請に応じ、同人が代表取締役をしている訴外株式会社工芸デザインスタジオの債務の弁済として訴外東洋信託銀行株式会社に支払ったことを認めることができるが、本件土地について売買契約を締結することにつき、原告が長野に代理権を授与したことについては本件全証拠をもってもこれを認めるに十分でない。

三  そこで進んで被告の民法第一〇九条の表見代理の主張について検討する。

≪証拠省略≫を総合すると、次の事実を認めることができる。

1  原告は、昭和三九年一二月ころ、バーのホステスをしていた長野と知り合い、爾来親密な交際を続けていたが、長野が株式会社工芸デザインスタジオなる会社を設立するに際し、これが設立発起人となり、これに資金的援助をするようになり、右訴外会社が訴外永代信用組合から資金を借り入れるに際し、自ら連帯保証人となり、昭和四〇年八月六日には右訴外会社の債務を担保するため、物上保証人として本件土地に右訴外組合との間に根抵当権設定契約および停止条件付賃貸借契約を締結した。

2  ところで、右訴外会社は右訴外組合より昭和四〇年一〇月二一日から昭和四二年二月六日までの間、前後六回にわたり合計金四一〇万円を借り受けたが、右根抵当権設定契約、停止条件付賃貸借契約金銭消費貸借契約、連帯保証契約については、昭和四〇年八月一九日付の根抵当権設定金員貸借契約公正証書、同年一一月六日、同年一二月二〇日、昭和四一年八月五日、同年一一月三〇日(二通)、昭和四二年二月一五日各日付の各債務弁済契約公正証書が作成され、前記各契約の締結、右各書類の作成および右根抵当権設定登記の登記申請手続については、原告において長野に対し、そのころ、長野の要請に基くまま使用目的を限定して自己の実印や印鑑証明書、委任状を手交してその手続にあたらせた。

3  一方、長野は右訴外組合よりの融資には限度があるとして前の夫である被告の紹介で訴外東洋信託銀行株式会社より昭和四〇年一二月二七日前記訴外株式会社工芸デザインスタジオ名義で金五〇〇万円を借り受け、右同日前記永代信用組合との根抵当設定契約を原告に無断で解約し、右訴外組合から返還を受けた本件土地の権利証を利用するなどして右同日右訴外銀行との間で本件土地につき原告に無断で抵当権設定契約および代物弁済予約契約を締結し、昭和四一年三月二九日その旨の抵当権設定登記手続をなしたが、そのころ長野は前記のとおり原告より前記訴外組合に対する公正証書作成手続に関して預っていた原告の実印により、その印鑑証明書を関係機関から原告に無断で交付を受けられる立場にあり、また原告名義の委任状も原告に無断で作成できうる立場にあった。

4  ところで、本件登記申請をなすにあたって必要とされた本件土地の権利証は、原告が長野に交付したものではなく、前記のとおり前記訴外組合が原告から預っていたものを長野において原告に無断で同訴外組合から返還を受け、抵当権者である前記訴外銀行に再び預けていたものが、原告の関知しない間に利用されたものに過ぎず、本件登記申請の際、長野から被告に原告の印鑑証明書および委任状が手渡されたがこれらも前記訴外銀行に対する抵当権設定登記手続の際と同様、当時長野においてこれらを原告に無断で手に入れ或いは作成することができる立場にあった。

以上の事実が認められるのであって、他に右認定を覆えすに足りる十分な証拠はない。

そして、右事実に≪証拠省略≫を、総合すると、右のとおり本件登記申請の際長野から被告に手渡された原告の印鑑証明書および委任状は、原告が前記訴外組合に対する公正証書作成手続に関して長野に交付していたものとは断じ難く、むしろ、長野が前記のとおり原告より預っていたその実印を利用して原告に無断で関係機関より交付を受け、或いはほしいままに原告名義を冒用して作成したものと推認できるのであり、他に右印鑑証明書および委任状を原告において長野に対して交付したことの認められない本件においては、原告は末だ第三者に対し、本件土地売買に関し、原告に代理権を与えた旨を表示した者ということはできないから、被告の民法一〇九条の表見代理の主張はその余の点を判断するまでもなく理由がないものといわなければならない。

四  次に被告の民法第一一〇条の表見代理の主張について検討する。

1  まず、被告は、原告において長野に対し、昭和四〇年一二月二七日本件土地について訴外東洋信託銀行株式会社との間で、根抵当権設定契約および代物弁済予約契約を締結するにつき代理権を与えていた旨主張するが、これを認めるに足りる十分な証拠はなく、かえって前記三、3に説示したとおり右各契約は長野が原告に無断でなした無権代理行為によるものであることが明らかである。

2  次に、被告は原告において長野に対し、同年八月六日本件土地について訴外永代信用組合との間で根抵当権設定契約および停止条件付賃貸借契約を締結するにつき代理権を与えていた旨主張し、なるほど前記三、1、2認定事実によると、右代理権の授与はこれを窺い知ることができるが、もともと民法第一一〇条所定の表見代理に関する基本代理権は権限踰越の行為がなされた時に存在しなければならないところ、≪証拠省略≫によると右各契約は原告と被告との間で、昭和四〇年八月六日締結され、いずれも同月二三日付でこれが登記を了していることが明らかであるから、長野の前記代理権は遅くとも右登記の完了した時点においてその目的を達して消滅したものというべく、したがって、前認定の長野が被告との間で本件土地について売買契約をした昭和四二年四月二五日当時には、長野の右代理権はすでに消滅していたことが明らかであるから、その余の点を判断するまでもなく、被告は民法第一一〇条の表見代理による保護を受けることはできないものというべきである。

五  さらに進んで被告の民法第一一二条と第一一〇条の競合主張について検討する。

ところで、代理権の消滅により代理人でなくなった者が過去に有していた代理権の範囲を越えて無権代理行為をした場合は、民法第一一〇条と民法第一一二条の要件を具備すれば当該自称代理人と相手方との間になされた行為につき本人がその責任を負うべきことは明らかであるところ、まず本件において民法第一一二条の要件である被告が前記代理権の消滅について善意であったかどうかの点について判断する。

≪証拠省略≫によると、被告は長野より、本件土地につき原告から任されて訴外永代信用組合との間で抵当権を設定し、金員を借り受けていたが、右訴外組合からの融資には限度があるので他に適当な融資先の斡旋をして貰いたい旨依頼されたことから、前記三、3に認定のとおり長野に訴外東洋信託銀行株式会社を紹介したが、その当時被告は、長野が持参した原告と右訴外組合との間の本件土地についての根抵当権設定、停止条件付賃貸借設定の各契約の証書を見て、原告と右訴外組合との間に右各契約が締結されたことおよび右各設定契約に基いてその旨の登記を経ていることも了知していたことを認めることができ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

右事実によれば、被告は、長野の有していた訴外永代信用組合との間で根抵当権設定契約等を締結する代理権は、右代理権が当該契約が締結されることによって消滅する一回限りのものである以上、特段の事情のない限り右各契約が締結され、これが登記が完了したことによって当然に消滅したことを了知していたものと解するのが相当である。

そうだとするとこの点に関する被告の主張は民法第一一二条の要件を欠き、被告は民法第一一二条と第一一〇条の競合による表見代理に基く保護を受けられないことも明らかである。

六  以上判示したとおりであって結局被告の抗弁はいずれも理由がないから、本件土地所有権に基き、被告に対し本件登記の抹消登記手続を求める原告の本訴請求はすべて理由があるものとして認容すべきである。

第二反訴についての判断

本訴における被告の抗弁について判断したとおりの理由により、被告は本件土地について所有権を取得したものとはいえないから、被告の所有権に基き原告に対し、本件土地の引渡を求める反訴請求はすべて理由がないことに帰するから棄却を免れない。

よって、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 松村利教)

<以下省略>

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